森のタマさん

便所虫とも呼ばれてしまうワラジムシ。 小笠原の森のタマワラジムシはひと味ちがう。 1cmを超える大きな体で、島の深い森の土を育む。 この種類は湿性高木林にしか見られないが、 モリワラジムシ、ハヤシワラジムシなどはもう少し乾燥した林にも見られる。 各々の環境で各々のワラジムシが、森づくりを担当しているのである。

・オガサワラタマワラジムシ Alloniscus boninensis

2016年7月、母島。担当:森

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ホンモノはもっと美しい

ハハジマヒメカタゾウムシ

オガサワラヒメカタゾウムシ属の多様性は 小笠原諸島の世界自然遺産推薦書でも紹介されている。 とりわけこの地域のものの美しさには、カメラを向けずにはいられない。 しかし、肉眼で見るほどにはどうしても撮れない。 ぜひ、ホンモノに森で出会ってほしい。

・ハハジマヒメカタゾウムシ Ogasawarazo mater

2016年7月、母島。担当:森

参考: 小笠原諸島世界自然遺産推薦書 p76

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小笠原からクモの新種が発見されました

クモといえば、網を張って虫を捕まえる黄色い縞模様のジョロウグモやコガネグモをイメージされる方も多いと思いますが、今回発見されたのはクモの中でも網を張らないタイプの「ハエトリグモ」の仲間です。

ハエトリグモと聞いても、どんなクモかイメージが湧かない方は、家の廊下や壁でピョンピョンと飛び跳ねる1cmに満たない白黒のクモを頭に思い浮かべると分りやすいと思います。これがもっとも目にする機会が多いハエトリグモ、「アダンソンハエトリ」という種類で、小笠原を含む日本中どこでも普通に見ることができます。

「ハエトリ」と呼ばれるとおり、ハエなどの小さな昆虫を素早い動きで捕まえて生活しています。そのピョンピョンと跳ねて虫を捕まえる様子から、英名でも「Jumping Spider」と呼ばれています。
※ちなみに、先日の「ダーウィンが来た!生きもの新伝説」で取上げられた「クジャクグモ」もハエトリグモの仲間です。

さて、ここからが本題です。
今回発見された新種は、論文の筆頭著者により「オガサワラハエトリ」と名付けられました。その名のとおり小笠原諸島の固有種であり、現在は、聟島、兄島、母島から発見されています。既に知られている種とは上あごや歯の構造が全く異なることから、新種であると判断されました。

また、小笠原諸島には10種程度のハエトリグモの仲間が生息すると言われていますが、そのほとんどが暖かい地域(外国を含む)に広く生息するものであり、なかには外来種と考えられるものもいます。これらを踏まえると、小笠原のハエトリグモの中では数少ない固有種であるため、小笠原諸島における生物相の成り立ちを明らかにする上で、とても貴重な発見であると考えられます。

父島や母島ではグリーンアノール等の捕食性の外来は虫類や、アカギ・モクマオウ等の外来樹木などの影響を受けて、固有の生物が脅かされていると言われています。特に、昆虫やクモなどの小さな生き物たちは、アカガシラカラスバト、オガサワラオオコウモリ等の鳥獣類と比べると、人の目に触れる機会が少ないために、もともと小笠原にいなかったのか、それとも、いなくなってしまったのかが分りづらく、人間が気づかないうちに数を減らしてしまうといった危険性があります。そのため、今回の発見のように新種として発表され、まずはその存在を認識されることがとても重要なことであると思います。

現在、島の方々や行政など様々な主体により小笠原の自然環境の保全活動が行われています。このような生物の分類研究も小笠原の自然環境保全への一助となればと感じます。

オガサワラハエトリのオス:褐色系の地に引かれたクリーム色のストライプが特徴的。非常に素早い。
オガサワラハエトリのメス:オスとはだいぶ模様が異なる。

蛇足ですが、googleに“ハエトリグモ”と入力すると、検索候補で「ハエトリグモ かわいい」というキーワードが出てきます。(笑)
たしかに顔をアップで見てみると、髭を生やしたおじいちゃんっぽい感じがします。ぜひ検索してみてください。機会があれば父島にも普通にいる「アダンソンハエトリ」を見つけて直接観察してみてください!!

参考及び引用

原記載論文
Suguro T. & Nagano H. 2015 A new species of the genus Icius (Araneae: Salticidae) from the Ogasawara Islands, Japan. Acta Arachnologica, 65: 91-95.

筆頭著者によるWEBページ(オガサワラハエトリ)
http://www.haetorihiroba.com/#!ogasawara/f0uce

永野


小笠原諸島世界自然遺産地域登録5周年記念セミナーについて

先日、当ブログでお知らせした小笠原諸島世界自然遺産地域登録5周年記念セミナー「小笠原の昆虫とアノールの今」についてご報告します。

7月5日、小笠原ビジターセンターで開催されたセミナーには50名以上集まりました。立見の方もいる程で、講演者の関係者や支庁、役場からだけでなく、一般の方も多数参加されていたようです。

まず、環境省小笠原自然保護官事務所の岸さんより、世界自然遺産である小笠原の固有性について説明がありました。小笠原では小面積の島々に多数の陸貝と植物の固有種がおり、昆虫は1300種のうち400種が固有種とのことでした。また、兄島では2013年3月にアノールが発見されて以来、アノール柵による北上の防止と捕獲作業に取り組んでいることについても説明されました。

次は、神奈川県生命の星・地球博物館の苅部さんより「アノールの固有昆虫への影響と絶滅危惧種を救う試み」と題して、父島、母島での希少昆虫の減少や絶滅とその原因がグリーンアノールと判明するまでの経緯と、それら希少昆虫を救うための取り組みについて説明がありました。

小笠原クラブの武田さんからは、兄島のハンミョウを守るため、島の人たちによる環境整備活動の取り組みについて紹介がありました。滝ノ浦から兄島に上陸し、危険なルートを通って片道2時間かけて調査地に向かい、クマデやほうきを使ってリュウキュウマツやモクマオウのリターを取り除くなど、大変な作業に取り組まれていることがよく伝わってきました。

オガサワラハンミョウの飼育スタッフである自然研の手塚さんと由野さんは、飼育現場の様子や、ハンミョウの一生と飼育方法など、イラストや図を使って分かりやすく紹介しました。

兄島で行われているアノール捕獲については、現場で実際にどんな作業をしているのか、フローラの和泉さん、佐藤さん、川島さんらが道具と体を使って再現。500〜1200個のトラップを2人で点検する捕獲班、中・北部エリアにアノールが分布を拡大していないか絶えずチェックしているセンサー班がそれぞれ作業を行っているとのことで、現場の様子や大変さがよく分かりました。

最後に自然研の芦澤から、兄島へのアノール侵入の経緯と、これまでの成果としてオガサワラゼミなどの昆獲防止のためのトラップの改良やデコイやオレンジ香料による誘引の試み、冬季のトタンを使った捕獲など技術開発の取り組みについて説明がありました。
いずれの発表も、島の昆虫を守るための現場での取り組みと作業の大変さが伝わる興味深いものでした。


小笠原諸島世界自然遺産地域登録5周年記念イベント

今回は小笠原諸島の遺産登録5周年を記念し、内地の都庁都議会議事堂にて、イベントやシンポジウムが行われたので、参加してきました。
展示コーナーでは小笠原の自然環境や外来種問題について、パネルなどで紹介されており、クイズコーナーや外来樹木のアカギを使った木工体験など、小笠原のゆるキャラ・アカポッポやメグロンも登場して、始終賑わっていました。

午後のシンポジウムでは、これまでの遺産価値を守るための取組みや成果が発表されました。
世界遺産登録の要となった小笠原固有のカタツムリや植物達の特徴的な進化過程、アカガシラカラスバトの捕食者であるノネコを捕獲し里親を探す取組み、観光客に島の成り立ちや歴史、観光のマナーを学んでもらうための取組み、西ノ島で沢山の海鳥が確認された話などが紹介され、どれも興味深く、携わった方々の大変な苦労や努力が伝わってくる内容でした。

なお、今回紹介されていた聟島と嫁島でのイチロウ君をはじめとするアホウドリの繁殖については、7月17日の「ダーウィンが来た!」で放送されるそうです。

また、第2部のテーマセッションでは、知床、白神山地、屋久島、小笠原の4つの自然遺産地域の関係町村が村町自慢や取組みを発表し、この日、「世界自然遺産地域連携ネットワーク協議会」を立ち上げることが宣言されました。これから、国内の自然遺産地域同士が交流し、様々に連携していくそうです。

大原



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