忍法、影分身の術 其一

皆さんはここ小笠原諸島に世にも奇妙なヤモリが生息していることをご存じでしょうか、、、?

これはオガサワラヤモリLepidodactylus lugubrisという種で、ヤモリ類としては小型(体長70〜80mm)で、昆虫や花の花粉などを食べます。

小笠原では人家の壁や森林、海岸と様々な場所で見つけることができます。

一見目立った特徴のないフツーのヤモリに見えますよね。

 

しかし、このオガサワラヤモリは全ての個体がメスで、かつクローンという大変不思議な生物です!!

 

つまりメスが交尾なしに卵を産み、そこから母親と遺伝的に全く同じクローンが生まれるわけです。

 

キリスト教の新約聖書によると、イエス・キリストは聖母マリアから処女懐胎によって誕生したと言い伝えられていますが、オガサワラヤモリはまさに同じことを当たり前のようにやってのけているわけです。

 

こういった繁殖様式のことを「単為生殖」(⇔両性生殖)と呼びます。

さて、このオガサワラヤモリは小笠原の名を冠してはいますが固有種でもなんでもなく、実は太平洋インド洋の島々を中心に広く分布しています!

物資などに紛れて人間によって運ばれたとも考えられますが、そういった記録のない地域や無人島にも分布を拡大させていることから、自然分散(流木に乗って流れ着いた、鳥によって運ばれた、など)によって拡がったとも言われています。

なぜこんなにも分布を拡げられたのか、、、?その秘密はやはり単為生殖にあると考えられています。

 

下の絵のように、一般的な両性生殖種が他の島や大陸に分布を拡げるには、多くの確率の低い行程が不可欠で、しかもそれらが何度も起こる必要があります。

いかに奇跡的な確率かおわかりいただけるかと思います。

 

一方で単為生殖種の場合は、子孫を残すのにオスも交尾も必要ないため、以下の行程だけでいいのです。

よって分布を拡げられる確率が両性生殖種に比べて格段に高いのです。

これはとんでもないアドバンテージです。

 

海洋島である小笠原諸島でオガサワラヤモリがたくさん見られるのもそのためなのでしょう。

 

他にも、オガサワラヤモリについて色々な興味深い事実が明らかになっています。

それらの紹介はまたの機会に!

 

担当:村上

 

参考文献

MURAKAMI, Y., SUGAWARA, H., TAKAHASHI, H., AND HAYASHI, F. 2015. Population genetic structure and distribution patterns of sexual and asexual gecko species in the Ogasawara Islands. Ecological Research 30: 471–478.

RADTKEY, R. R., DONNELLAN, S. C., FISHER, R. N., MORITZ, C., HANLEY, K. A., AND CASE, T. J. 1995. When species collide: the origin and spread of an asexual species of gecko. Proceedings of the Royal Society of London B 259: 145–152.

YAMASHIRO, S., TODA, M., AND OTA, H. 2000. Clonal composition of the parthenogenetic gecko, Lepidodactylus lugubris, at the northernmost extremity of its range. Zoological Science 17: 1013–1020.

 



プロフィール

最近の記事

記事区分

過去の記事

リンク

others

自然研小笠原ブログに掲載される記事や写真等の著作権は、(一財)自然環境研究センターまたは撮影者に帰属します。