この痕跡の主は?

野生動物の調査では、足跡や糞、樹幹に付けられた爪研ぎ痕などの痕跡によって、種類や行動を読み取る「痕跡調査」という方法が用いられています。

 

雪上のテンの足跡、イノシシのヌタ場、樹の鹿の角研ぎ痕、リスなどがマツの実を食べた後に残る”エビフライ”が有名でしょうか。また、この痕跡をフィールドサインと呼んだりします。

 

先日の母島出張で、とある動物の痕跡調査を行ったのでご紹介します。

 

その動物とは…

 

ヒメカタゾウムシです。

 

小笠原諸島に固有の昆虫で、最近の研究では13種類にも分かれていると言われています。これらを総称して、「ヒメカタゾウムシ類」とも呼びます。

 

 

葉上を歩くヒメカタゾウムシ

(左は石門周辺に生息する種類、右は乳房山周辺に生息する種類)

 

実は、昆虫も種類によっては、とても分かりやすい痕跡を残します。

 

このヒメカタゾウムシ、成虫は植物の葉の柔らかい部分を食べていて、その食べ痕はゼリービーンズのような、小さなミミズのような、何とも言いようがない模様です(皆さんは何を思い浮かべますか?)。また、ヒメカタゾウムシが多くいる場所では、周囲の葉にびっしりと食べ痕が残ることもあります。

 

 

 

ヒメカタゾウムシの食べ痕

 

小さなヒメカタゾウムシですが、特徴的な食べ痕はとても目立ちます。ちょっとマニアックですが「痕跡」を頼りにして、この綺麗で愛らしい昆虫を探してみるのはいかがでしょうか!

 

 

〜おまけ〜

ヒメカタゾウムシが食べていた植物

モクタチバナ Ardisia sieboldii

ヒメツバキ schima mertensiana

オオバシロテツ Melicope grisea

フトモモ科(Myrtaceae)の一種

シマホルトノキ Elaeocarpus photiniifolius

アカギ Bischofia javanica

キバンジロウ Psidium cattleianum

オオシラタマカズラ Psychotria boninensis

 

島や地域にもよりますが、ここ母島でのヒメカタゾウムシは、固有種を含む様々な植物に育まれているようです。食べ痕が付いている植物はまだまだ見つかりそうです!

 

〜おまけのおまけ〜

小笠原の植物を調べる時に、とても頼りになる「小笠原植物図譜」という図鑑があります。

いくつかの植物にヒメカタゾウムシの食べ痕がしっかりと写っています。お持ちの方はパラパラとめくってみてください。(私だけかもしれませんが、見つけたときに妙な喜びを感じました…

 

 

※遺産地域に関連する各種法令等を遵守し調査を行っております

※本ブログ内の写真の一部は環境省事業内で撮影しております

永野

 

〜ヒメカタゾウムシ類について〜

体長は5〜7mm内外。おもに在来樹林に生息しており、後翅が退化しているため移動は歩行のみです。小笠原諸島に固有の昆虫で、最近の研究では島や環境ごとに13種類にも分かれていると言われています。写真の種類のように、ラメラメの美しい外見のものや、黒や茶色の地味なもの、住処も樹上や土壌中と様々です。成虫が良く見られる時期は6〜7月と言われています。現在、研究が進められていますが、生活史等にはまだまだ不明な点が残されています。


南国フルーツ

 

本州が気温40度超えの酷暑となっていた7月下旬、小笠原の最高気温は30度ほどで、気持ちの良い風の吹く避暑地となっていました。

ですが、年間を通じた小笠原の気温はやはり高く、気候区分は亜熱帯に属します。

今回は、亜熱帯・小笠原で食べた南国フルーツを紹介します。

 

まずはこちら。

 

―写真1 緑の六角形で覆われたフルーツ

 

トウモロコシくらいのサイズ、重さ300gほどのずっしり感、お値段900円とお高めです。

ありがたいことに、同じ宿を利用していたお客さんにお裾分けしていただきました。

最初にこのフルーツを見た私たちは、緑の六角形の部分が食べられるのだろうと思い、熟してポロポロと取れる六角形をお皿へ集めました。

 

そして宿のお母さんへ、

「おかあさーん、これ食べたいので洗ってくださーい」

 

するとお皿の中を見たお母さんは大爆笑です。

「ここは食べるところじゃないわよ〜 食べるのはもっと内側のじゅくじゅくしたところ!」

 

なるほど、確かによく見ると内側に、ねっとりと熟したところがあります。

どうやらここが食用になるらしいです。

 

―写真2 光沢のある薄黄色部分が食用

 

ところで、このフルーツをつける植物はいったい何かというと、サトイモ科の通称モンステラです。

フルーツとして売られていたのは肉穂花序という部分です。

 

―写真3  Monstera deliciosa 通称モンステラ(北大植物園にて撮影)

 

サトイモ科というと根茎を食べるサトイモもありますが、ミズバショウやザゼンソウ、テンナンショウ属、クワズイモなどのようにほとんどが食用には不向きです。(クワズイモなんてその名の通りですね。)

ですが、こちらのモンステラは学名がMonstera deliciosaで、種小名はdeliciousと語源を同じにしています。

つまり、モンステラ属の中でも美味しい種ということです!

(ちなみにMonsteraはラテン語で怪物を意味するmonstrum(いわゆるモンスター)に由来するらしいです。葉の切れ込みの形に由来するのでしょうか。)

 

 

さてさて、話は戻ってモンステラのお味はというと、、、甘酸っぱい!

ねっとりした舌触りに強い甘みが乗っていますが、最後に少し酸味があります。

他の食べ物に例えるなら、甘さはバナナ、最後の酸味はパイナップルです。

 

この肉穂花序は下方から上方へ徐々に熟していきますが、未熟部分はシュウ酸カルシウム(有毒)が残っている可能性が高く食用には不向きです。

一週間くらいかけて少しずつ摘んでいくのが美味しい食べ方だそうな。

小笠原で購入し、自分でもつまみながら持ち帰れるお土産フルーツとしてオススメです。

 

 

[おまけ]

宿の庭ではミラクルフルーツ(赤い果実、アカテツ科Synsepalum dulcificum)も育てているそうで、食後のデザートにいただきました。

 

―写真4 写真左:レモン 写真右:ミラクルフルーツ

 

ミラクルフルーツは種子の周りの果肉にミラクリンという物質が含まれています。

果肉を舌でよーく転がしてからレモンを食べると、、、

なんと、レモンが甘−い!全く酸っぱくない!!不思議!

 

 

亜熱帯・小笠原には、本州であまり出回らない南国フルーツが盛りだくさんです。

島内売店で見かけたらぜひ一度お試しください。

 

担当:田村


西之島、再々噴火

 

まさかの、再々噴火。

201311月に噴火した西之島は元の島をほとんど飲み込んで約10倍に成長。

いったん活動が収まったと思われ警戒も解除された2か月後の20174月、再噴火。

また活動が収まったと思われ警戒が縮小された3週間後のつい先日2018712日、再々噴火。

なかなかに予想を上回るアマノジャクな島ですね!

調査を企画する側としては、とても困った事態ですが、逆に感心してしまう部分も。専門家にも相談し噴火の継続期間に応じて5つものプランを用意したのに、それ以外の切り札を出されたのですから。

自然は思い通りにはならないのが面白い、ということを肌にしみて感じます。

イチからプランを練り直します。

 

そんな予想外の噴火の合間を縫うように調べられた西之島の最新の魅力を島の皆さんと共有できたら、との思いで講演会が開催されました。

 

島内に貼りだした西之島講演会のポスター

 

父島、母島合わせて60名ほどのご来場があり、講演ではドローン調査で得られた映像や調査結果の数々をご報告するとともに、今後の調査計画等をご紹介しました。

 

西之島の、島自体の拡大や変化とともに、そこに暮らす生き物たちは、どのように数や種類、関係性を変化させていくのでしょうか。

僕がおじいさんになるまでに何種類の虫が暮らし始めるのだろうか。島の子たちがおじいちゃんおばあちゃんになるころには森になっているのだろうか。

い目で、皆さんとともに島の大地と生態系の成長を見守りたいものです。

 

(森)


アノール探索の新兵器

アノール探索の新兵器

 

ドローンに続きアノール探索の新兵器がやってきました!

 

Goproの外観(5cm四方程度のコンパクトな大きさ)

 

最近、主にスキーやダイビング等のレジャーで一般の人も使い始めている、小型カメラのGoproです。

小笠原でも手にしている人を見かける事があるのではないでしょうか?

 

空を飛ぶドローンからは、樹冠のアノールしか探索ができませんが、このカメラを調査員が携行して現地を歩けば、林内のアノール発見にも役立てられるのではないかという発想です。

 

実際に野外で撮影すると・・・こんな感じです。

 

Goproで撮影したアノール(赤丸内)

 

まだ、アノールを探しに行って、見つけた場所がどのように映るのかを試験的に撮影している状態ですが、アノールが映っているのが分かりますか?

 

Goproは通常・広角・super viewの3つの画角が選べ、右にいくほど広い範囲の撮影が可能です。画角が広いほど広範囲のアノールを探すことができますが、あまり広すぎると画質が低くなって画像でのアノールの判別が難しくなるので、程よい画角がどの辺なのかなど、現在試行錯誤の段階です。

また、小型のためヘルメットに装着して撮影ができます。100g程度ですが、実際に装着して歩くと結構首が疲れました・・。とはいえ、過酷な環境の兄島で手を塞がずに撮影できるというのはかなりの利点です。

 

5月に新入りとして迎えたばかりなので、まだまだ試行中ですが、いずれは他の調査の調査員に装着してもらい、アノール探索を兼ねる事ができればなぁと考えています。

 

 

おまけ

環境省レッドリストでは準絶滅危惧(NT)に選定されているルリカメムシ(Plautia cyanoviridis

 

アノールの撮影テスト中にルリカメムシを発見しました(指をさしている場所)。

他の場所では、交尾中のルリカメムシにも出会う事が出来ました。

父島でも見られるので、小笠原に来た際にはこの鮮やかな緑のカメムシを探してみてください。

(ルリカメムシの発生時期は6月〜7月頃です)

 

 

秋元


小笠原の熱きガタボーイ&ガタガール

 

先日の小笠原出張で気になる生物がいたので、ご紹介します。

皆さんは、シオマネキという生き物をご存じでしょうか?

潮の満ち引きで海に沈んだり地面が見えたりする『干潟』と呼ばれるところに生息しているカニで、オスのハサミは片方だけとても大きくなるのが特徴です。

ー写真1 オガサワラベニシオマネキParaleptuca boninensis

環境省版海洋生物レッドリストで絶滅危惧IA類(CR)に選定されている

 

そんなシオマネキの仲間が小笠原にも生息していて、その名も『オガサワラベニシオマネキ』といいます。

小笠原諸島の父島にのみ生息している固有種のカニです。

 

ー写真2 オガサワラベニシオマネキParaleptuca boninensisのオス(左) とメス(右)

 

南西諸島に生息しているよく似た種類の『ベニシオマネキ』は鮮やかな紅色の甲羅とハサミを持つ個体が多いのですが、オガサワラベニシオマネキはどうにも「ベニ」って感じではなく、砂地に紛れる色や模様の個体が多いような気がします。

ハサミもそこまで赤くないので、よく見ないとカニがいることに気がつかないかもしれません。

 

人が近づくと一斉に干潟に掘られた巣穴の中に隠れてしまうのですが、こちらが動かずじっとしていると、巣穴の中から様子を見つつそろそろと出てきて、せわしなくエサを食べたり、大きなハサミを振り上げる『ウェービング』をしたりします。

 

暑いなか干潟に座ってオガサワラベニシオマネキを観察していると、ちょっと変な個体がいました。

 

ー写真3 両腕が肥大化したオガサワラベニシオマネキ。かっこいい。

 

なんと、両方のハサミが大きくなっています。

ふつうシオマネキのオスは、片方のハサミだけが大きくなるのですが、この個体は両方が大きくなりつつありますね。

 

シオマネキのオスはふだん小さい方のハサミで泥をつまみ、泥の中に含まれる小さなエサを食べますが、この個体は不便そうに大きいハサミで泥を口にかき込んだり、口を直接地面につけて食事をしていました。

大きなハサミを両腕に装備してとてもカッコイイのですが、生活するには不便みたいですね。

 

どうしても気になったので翌日の空き時間も観察に行ってみたのですが、残念ながら見つかりませんでした…不便なハサミだと生き残るのも難しいのかもしれません。

彼がこのまま大きくなったら、どんな姿になるのでしょうか?

 

 

猿田



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