小笠原のオカヤドカリ紹介
ペット大国である日本は、犬、猫、鳥のみならず、ゾウガメやカエルといった爬虫両生類や、はたまた昆虫類の飼育が浸透している国ですが、今回は人気のペットの1つ、オカヤドカリについてご紹介します。
ヒロベソカタマイマイの殻を背負うムラサキオカヤドカリCoenobita purpureus(天然記念物)。日本に生息するオカヤドカリ属は全て国の天然記念物である。
分類学上、オカヤドカリ属に含まれる種を総称してオカヤドカリと呼んでいます。小笠原諸島においては6種が確認されており、よく見かけるのはムラサキオカヤドカリ、ナキオカヤドカリの2種です。
ヤドカリといえば、普段は海の中に暮らしていてあまり陸地に上がる印象はありませんが、オカヤドカリは主として陸上生活を送り、小笠原や南西諸島などの生息地では陸地で人の目に触れる機会も多いのです。
南島で目にするオカヤドカリは、絶滅種かつ天然記念物でもあるヒロベソカタマイマイの殻を利用することが多いため、天然記念物が天然記念物の殻を背負うという(何となく)満足度の高い見た目となっています。
左上:兄島はカタマイマイ属の殻がひときわ多い。
左下:父島にて、アフリカマイマイの殻を背負った大型のムラサキオカヤドカリ。
右上:時には人工物も利用する。
右下:交尾前ガードを行うオス個体。
夏の夜、メス個体は腹部に抱えた幼生を海に放出します。その際、交尾相手を探すオスも入り交じり、すさまじい集団となります。
繁殖期は昼間でも浜に集合していることがある。
そして放出された幼生は幼生期を海で過ごし、ゾエア→グラウコトエという段階を経て稚ヤドカリになり、再び陸に上陸するのです。
写真右:海中を漂うオカヤドカリ属の幼生(グラウコトエ)。
そういえば、冒頭で「人気のペット」と紹介しましたが、天然記念物であるオカヤドカリを捕獲しようものなら文化財保護法に抵触してしまいます。
一般に販売されているオカヤドカリは、特定の業者が国の許可を受けて捕獲しているものですので、ご安心ください…。
担当:小山