旅するトップモデル

猛暑が続く小笠原ですが、河川に目を向けると涼しげな鳥たちを見つけることができます。

今回は、その中でも特に優雅でユニークな鳥、セイタカシギを紹介したいと思います。

 

唐突ですが、仮に鳥類界で各部門の第一位を決める世界大会を開催したなら、

サイズ部門ではダチョウ、

飛行速度部門ではハヤブサやハリオアマツバメ、

飛行距離部門ではヨーロッパアマツバメ、

潜水部門ではコウテイペンギンが優勝候補筆頭でしょうか。

そして、セイタカシギもまたある部門で世界第一位の座に君臨しています。

 

セイタカシギ Himantopus himantopus(小笠原諸島 父島にて)

 

そう、彼らは世界で最も相対的に脚の長い鳥、まさに鳥類界のトップモデルなのです!

 

英名は和名以上に名が体を表しており、Stilt(竹馬)と呼ばれています。

まさに竹馬と呼ぶにふさわしい脚の長さですよね!

 

この長い脚はダチョウのように速く走ることに特化したものではなく、餌を採る際にその真価が発揮されます。

セイタカシギは主に湿地や水田にて、魚類や甲殻類、水生昆虫等を捕食します。

その際、長い脚をもつ彼らは競合する他の湿地性鳥類よりも、水深が深い場所までアクセスできるというアドバンテージがあるのです。

 

小笠原諸島 父島にて

 

海洋島である小笠原にも分布しているだけあって、セイタカシギの世界的な生息域は広く、私自身オーストラリア北部や台湾、中国(杭州)で確認したことがあります。その他にもアメリカ南部から南アメリカ、アフリカ、ヨーロッパまで、多くの地域に不連続的に分布しているようです。

 

日本国内でも広く確認されており、小笠原では主に汽水域で見られますが、一般的には休耕田を含めた淡水域を好むとされています。

かつては珍鳥とされていましたが、近年では愛知県のほか、東京都や千葉県などで繁殖しており、東京湾周辺でも周年生息しているようです。

 

秋田県のとある湿地にて

 

それにしても、この圧倒的スタイルに加え、白色の体、光沢のある黒い羽、ピンクの長い脚、黒く長い嘴と、色彩・形状も含め本当に芸術点が高いですよね。

その美しさと優雅な佇まいから「水辺の貴婦人」と呼ばれているそうです。

 

そんな彼らが絶海の孤島にまで飛んできてくれるのですから、彼らのサービス精神には頭が下がる思いです。

 

担当:村上


オガサワライラガ

連日の猛暑の中、涼しげな緑色の蛾の幼虫、オガサワライラガ(固有種)を見つけました。

成虫は茶色い地味な姿をしていますが、幼虫は何とも可愛らしいですね。

 

幼虫は様々な樹木、時には地上部でも見られ、頻繁に移動しているようです。

食草はあまり調べられていないようですが、ムニンシャシャンボの葉上で確認したことがあります。食み痕のようなものも確認できたのでこれも食草なのかもしれませんね。

キンショクダモは食草の1

頭部の様子

 

オガサワライラガ(Belippa boninensis

 

担当:小山田


父島の海を見に行こう

せっかくの小笠原、泳がなければ勿体ない!
新型コロナウイルス対策で来島後2週間の自粛がやっと明けた私は、衝動に駆られ先輩におススメされたとある海岸へと足を運びました。すこし奥まった場所なのもあってか人影も少なく、心ゆくまで観察できそう。早速海へと入っていった私を迎えたのは、こんなお魚でした。
 
写真 1 カンモンハタ(Epinephelus merra

どっしりと岩陰に鎮座し、こちらをしげしげと見つめているようです。個人的にハタの仲間は、目を合わすや否やサッと物陰へ隠れてしまうヤツが多いように感じるのですが、カンモンハタはあまり動じず、ジーっと様子を窺っていることが多い気がします。独特なアミメ模様が目を引くお魚です。揺れる水面の影に似せているのかな。
さらに沖側へ泳いでいると、色鮮やかなお魚が視界へと現れました。
 
写真 2 トゲチョウチョウウオ(Chaetodon auriga)とホンソメワケベラ(Labroides dimidiatus

 

元気な黄色に平たい体、ひと目でチョウチョウウオの仲間だとわかります。ナナメの縞模様に背びれの後端に黒い丸ポチ、トゲチョウチョウウオというお魚です。
そして一緒に写っている細長いお魚、きれいな青色に黒い縦すじ。ホンソメワケベラというお魚。知っている人も多いかもしれません。ほかのお魚の体表をつついて寄生虫などを食べ、お掃除することで有名なお魚です。今回もお掃除シーンに出会えました。


写真 3 お掃除中

 

お掃除される側は大人しく、されるがままになる…らしいのですが、私が今回出会ったこの子たちは、齧りどころが悪かったのか時々トゲチョウチョウウオに追い掛け回されていました。痛かったのかな。
また、ホンソメワケベラのそっくりさんに「ニセクロスジギンポ(Aspidontus taeniatus)」というお魚がいます。この子はお掃除のふりをして近付き、体表を齧り取って逃げちゃうヤツ。賢い生き方というか、知恵が回るというか。

今回出会ったお魚たちは、どれも日本(特に西日本の太平洋側)で比較的メジャーにみられるお魚たちです。とはいえ生きて動いている実物をその目で見るのはとても面白く貴重な経験になると思います。この一夏の思い出に、あなたも自然観察へ出かけてみてはいかがでしょうか。

 

担当:鈴木


小笠原の酉と言えば part

以前本ブログで酉年に合わせてアカガシラカラスバトを紹介させていただきました。今回、酉年はとうに過ぎていますが、せっかくなので小笠原の固有鳥類であるメグロ Apalopteron familiare を紹介したいと思います。

 

メグロ Apalopteron familiare

 

この鳥は、現在では小笠原諸島母島列島にのみ生息が確認されている日本固有種で、スズメ目メジロ科メグロ属に分類される鳥類です。この種の分類については紆余曲折有り、かつてはヒヨドリ科、チメドリ科、英名「Bonin honeyeater」からも察せられるミツスイ科等に分類されていましたが、近年のDNA解析からメジロ科(最近縁種はマリアナ諸島のオウゴンメジロ Cleptornis marchei)に分類されることとなりました。まさに白黒はっきりついたわけですね!なお、1977年には特別天然記念物に、1993年には国内希少野生動植物種に指定されています。

 

さて、この鳥、母島に行けば割と苦労せず確認出来るのですが、現在は小笠原諸島のうち、母島・向島・妹島の3島でしか確認できません。戦前では聟島列島でも亜種が確認されていたようです。

はて、では間に位置する父島は…?

 

どうやら、存在していたらしいのです!

時をさかのぼること約200年、1828年に本種の記載者ハインリヒ・フォン・キットリッツ(Heinrich von Kittlitz)が父島で確認したことを示す文献が残っていたようです。残念ながら、その後何かしらの要因で絶滅してしまい、今となっては父島で見ることはかなわなくなってしまいました…。

 

また、この鳥のもう一つの面白い点が、島間での移動をほとんど行わないということです。

現在確認できている母島・向島・妹島のメグロの遺伝子や形態を比較したところ、各島ごとにDNA構成に大きな違いが見られ、一部ではくちばしの形が異なっているなど、形態的な違いも確認されているようです。まさに日本における“ダーウィンフィンチ”ですね。

 

現在はコロナ禍でもあり容易に訪れることはできませんが、いずれ事態が終息した暁には母島を訪ね、ぜひ彼らを観察してみてください。ちょこまかと動く姿はなかなかに愛らしいですよ。

 

ガードケーブルに乗るメグロ

 

担当:芦澤

 

参考文献

シュプリンガー マークS.,樋口 広芳,上田 恵介,ミントン ジェイソン,シブレイ チャールズG.1995.メグロがメジロ類の1種であることを示す分子生物学的証拠.山階鳥類研究所研究報告 27(2):66-77

鈴木 惟司,森岡 弘之.2005.小笠原諸島父島におけるメグロの分布と絶滅.山階鳥類学雑誌37(1):45-49

Kazuto KAWAKAMI,Sachiko HARADA,Tadashi SUZUKI and Hiroyoshi HIGUCHI.2008. Genetic and morphological differences among populations of the Bonin Islands White-eye in Japan.Zoological Science 25.


忍法・変わり身の術

 皆さんはここ小笠原諸島に奇妙なヘビが生息していることをご存じでしょうか、、、?

これはブラーミニメクラヘビ(Ramphotyphlops braminus)という種で、ブラーミニミミズヘビという名でも知られています。

ヘビとしては最小のグループ(全長15〜20冂度)に属し、アリ類、シロアリ類や小型の土壌動物を食べています。過去の記事で単為生殖により子孫を残すオガサワラヤモリについて紹介されました(http://ogasawara.jwrc.or.jp/?eid=90)が、今回はその外伝バージョンです。

 

本種は元々小笠原諸島に生息しておらず、持ち込まれた植物の根のまわりにある土壌に紛れ込んで侵入した可能性が高いようです。オガサワラヤモリと同様に単為生殖により子孫を増やすことが知られており、メスのみの存在が確認されています。小笠原諸島のような海洋島ではその生存戦略が優位に働いたことでしょう。

 

土中を移動しながら生活しているため普段は滅多に目にすることがなく、不意に耕作地で見つけたとしても、名前の通り本当にミミズと間違えてしまいそうです。本人達にその気はないかもしれませんが、私自身も本種を探しているときに、ミミズをこのヘビと間違えて何度かがっかりした経験があります。

※参考画像(ミミズ)

 

もし本種を見かけたら、じっくりと観察してみてください。

小さなウロコや目が確認できて、しっかりヘビしていますよ。

 

担当:小山田



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